生徒成果物(研究論文)

特別理科コースの生徒が、学校設定科目「Advanced Science(以下、「AS」)」(2年次2単位、3年次1単位)において専門進化型課題研究に取り組んでいます。ASでは、身近な疑問や興味・関心に応じて生徒自身が研究テーマや実験を設定し、およそ1年半にわたりグループ研究を行っています。このページでは、その取り組みの成果(研究論文)を公開しています。

研究論文

2023年度(令和5年度)
管理番号 分野 研究テーマ
R05-01 物理 双胴型防波堤による津波被害軽減

要約

 津波の波高を減少させる「双胴型防波堤」の水槽実験を行い,津波被害軽減に役立てたいというのが研究の動機である。私たちは双胴型防波堤として底面がひし形の四角柱を模型として作成し,防波堤間の隙間に面している角度と,防波堤の間隔に注目して実験を行った。角度は正三角形となる60度が最適である,防波堤の間隔は広いより狭いほうが波高を減衰できるという仮説を立て,双胴型防波堤の模型を自作し,その模型の角度や間隔による波高の変化を調べた。手動で波を起こし,模型通過前の波高によって場合分けをし,減衰率を比較した。

R05-02 化学 ガラスの汚れと水滴の接触角

要約

 私たちは,ガラスに付着する砂のような汚れに着目し,ガラス表面に付着した粒子の大きさや密度は,水滴の接触角にどのような影響を与えるのか疑問に思い,調べることにした。そこで,本研究では,砂と成分的に近く,粒子の大きさにばらつきの少ない研磨材を用いて実験を行った。研磨材の大きさと水滴の接触角の関係,また粒子の密度と水滴の接触角との関係を調べた。これらの実験により,粒子の密度と水滴の接触角は,粒子の大きさが大きいときは負の相関,粒子の大きさが小さいときは正の相関となり,逆の相関を示すことがわかった。

R05-03 生物 ビタミンCが植物に与える影響とその関係性

要約

 本研究では,ビタミンⅭには植物にとって発芽を促進させる効果があるのではないか,また発芽率を上げる効果があるのではないかと仮設立てて実験を行った。本実験ではブロッコリースプラウト,カイワレ大根,マスタードスプラウトの3種類のスプラウトを使用した。これらを使用した理由は,短い周期で効率よく実験を複数回行えるからである。スプラウトは通常,種に水を吸水させ,発芽後に暗化条件で成長させる。その後,葉に光を当てて緑化させるという過程を経て出荷される。先行研究より,植物自身に含まれるビタミンCの役割については分かっているが,外からビタミンCを与えた際に植物に与える影響についてはまだ研究がなされていないため,本研究を行った。

R05-04 物理 鉱石ラジオを使った電波発電

要約

 私たちは災害や電力不足による停電時にも使用することができる鉱石ラジオに注目し,鉱石ラジオは簡易に作ることのできる電源として利用できるのではないかと考えた。しかし,鉱石ラジオが生み出すことのできる電力はとても低く,通常の状態では小さい音声を聞くことしかできない。そこでアンテナや回路を変化させて電圧を増加しLEDを光らせることを目標に研究を行った。アンテナに巻くエナメル線の巻き数,アンテナの高さ,2つのアンテナ間の距離,回路を変化させて実験を行った。結果は電圧がアンテナの巻き数や地面からの高さに比例して増加し,2つのアンテナ間の距離は150cm以下のときアンテナ自体が生み出す電力が最大になった。

R05-05 化学 液だれ軽減への道

要約

 調味料を使うとき,液体が垂れて食事中に小さなストレスを感じる人は多い。この研究は,その小さなストレスを軽減し,快適な日常生活を送るために始めたものである。予備実験を行ったところ,口が薄すぎると液だれしないことが分かったため,まず,液だれする口の厚さを調べた。その結果,油は,どのような厚さの口を使用しても液だれした。一方,水は,1.5㎜より薄い口では,液だれしにくくなった。また,液だれを起こす口では,液体が口の下側を沿うように流れ落ちる現象(これを本研究では巻き込みと定義する)が度々見られた。油と水の結果の違いには表面張力が関係すると考え,それぞれの表面張力を実験によって調べたところ,水の値の方が大きかった。

R05-06 生物 カゼインプラスチックの分解について

要約

 牛乳由来のタンパク質から作られるカゼインプラスチックは生分解性をもつことから,プラスチックごみの削減につながると期待されている。しかし現在は,ハンコやボタンなど使用用途が少なく,一般に普及しているとは言い難い。そこで,私たちはカゼインプラスチックの生分解性以外の分解方法について調べることで,新たな場面で使えるようにしたいと考えた。

R05-07 物理 ダイラタント流体の量と衝撃吸収の関係

要約

 外部から力を加えると固体的に振る舞うが,力を加えるのをやめると流体的に振る舞うダイラタント流体には衝撃吸収の働きがあり,この現象(ダイラタンシー現象)にとても興味を持った。この流体に関する他の研究を調べてみると,ダイラタンシー現象が起こる条件や溶媒と溶質のより衝撃吸収する組み合わせについては研究されていたが,この流体がどのくらい衝撃吸収するのか実際に数値を測っている研究は見当たらなかった。そこでこの現象と衝撃吸収の関係を数値で示したいと思った。

R05-08 物理 自転車を漕いで手軽に風力発電~通学時のスマートフォンの充電を目指して~

要約

 私たちは風力発電に興味があったのに加えて,普段の生活で自転車を使うことが多いことから,自転車を漕ぐことで受ける風で発電し,通学時にスマートフォンを充電したいと考えた(図1)。そこで,身近な材料や安価なモーターから自転車用の小型の風力発電機を製作して研究を行った。
 風力発電機を自作するためには,最適なプロペラ,モーター,回路を考える必要がある。プラペラは作りやすさを重視して多翼型を採用し,大きさは自転車の前かごに収まるように計算して決定した。送風機を用いた実験と理論計算を通して,台形の羽を用いる場合,ピッチ角(回転軸に垂直な面に対する羽の角度)は15度,羽の枚数3枚が最適であると分かった。

R05-09 化学 ホコリと静電気 ~静電気は掃除の味方になり得るか~

要約

 たまったホコリや砂を掃除する手法として静電気を用いることが可能か検証した。ここでは,主にホコリの主成分であるアクリル・ウールの繊維と本校グラウンドの砂の質量と引きつける距離の関係に焦点を当てた。結果として,静電気で引きつけることができる距離は小さく,質量に関わらず一定であった。また静電気量が大きくても距離が大きいとは限らなかった。砂は繊維よりも引きつけられにくいことが分かった。以上より,静電気を用いて掃除機のようにホコリや砂を集めることは困難であると結論づけた。

R05-10 数学 片付け最適戦略についての考察

要約

 本研究では数理モデルの手法を用いた考察を行うことで,できるだけ片付けをせずに,なおかつ快適に過ごせるような,片付けについての最適戦略を提案する。私たちは,片付けを含めた日々の生活における労力を「生活労力」と定義し,生活労力の時間変動を表すモデルを作成した。得られたモデルから,生活労力は時間とともに増加することが明らかになった。また,得られたモデルを用いて,片付け回数と生活労力の関係を調べた。片付け回数は多すぎても少なすぎても生活労力が大きくなり,最適な片付け回数が存在することが分かった。私たちはよく「出した物はすぐに片づけなさい」と言われてきたが,その戦略が最適ではなかったということを示唆している。

R05-11 生物 納豆菌が植物の病害抑制にもたらす効果

要約

 私たちは,植物の免疫を高めることにより,植物病害を抑制できないかという点に着目し,植物の免疫について研究を進めた。その中で,ISR(誘導全身抵抗性)という植物の免疫システムがあることを知り,興味を持って調べてみたところ,ISRは植物の抵抗を働かせる抵抗誘導資材を植物の一部にのみ接種しても,植物全体に抵抗性が表れること,また,根圏細菌によって活性化される免疫システムであることが分かった。そこで,私たちは根圏細菌の中で最も身近な納豆菌に着目し,寒さや害虫に強く育てやすいレモンバームを使用して研究を行った。

2022年度(令和4年度)
管理番号 分野 研究テーマ
R04-01 物理 クラドニ図形発生時における音量の変化について

要約

私たちは音源の周波数を変えながらクラドニ図形を作成する中で,周波数によって聞こえる音量が違うように感じた。そこで私たちはクラドニ図形が発生した時の周波数と音量の関係について調べることにした。クラドニ図形の発生の仕方,音源の音量,周波数の記録を行い,クラドニ図形と音量の変化について考察を行う。

R04-02 化学 ストームグラスと湿度

要約

ストームグラス内の結晶は天気によって変化するとされている。19 世紀ヨーロッパでは天気予報の道具として使われていた。しかし,5 成分(純水,エタノール,樟脳,塩化アンモニウム,硝酸カリウム)で組成が複雑なこともあり,天気との詳しい関係は分かっていない。本研究ではストームグラス内の結晶の様子と湿度との関係性を調べることを目的とする。

R04-03 化学 カゼインプラスチックの生分解性と強度 ~ 添加物の違いによる比較 ~

要約

環境保全の観点から生分解性プラスチックが注目を集めている。私たちはカゼインプラスチックの強度を高めるにはどうすればよいか疑問に思った。先行研究において,プラスチックに加える繊維くずの量の増加に伴い引張強度及び剛性率が向上,生分解速度も増加したことが明らかになっている。また,木材・プラスチック複合材は優れた耐久性を持つこともわかっている。そこで,本研究では綿糸,木くずをカゼインプラスチックに混合することで強度は高まるか,また強度の変化に伴い生分解性はどのように変化するか調べた。

R04-04 数学 新型コロナウイルスによる香川県の産業

要約

新型コロナウィルスによる香川県の産業への影響を調べ,経済回復の方法を考察することを目的とし,研究を行った。高校生の技量の範囲内で研究を行うために,産業・人流・感染の3つのグループに分け,それぞれの関係を回帰分析や相関係数などを用いて調べた。

R04-05 物理 紙ひもの強度

要約

プラスチック製のひもに代わる紙ひもを作り現在進められているプラスチック削減に役立てたいというのが研究の動機である。私たちは元の紙より紙ひもにしたほうが強度(ここでは強度を引張強度とする)が高くなる,伸びが大きいほど強度は高くなるという仮説を立て,紙ひもの強度を高くするための条件を知るため,紙ひもを自作し,その紙ひもの長さや伸びによる強度の違いを調べた。その結果,紙ひもを作成する過程で短冊状の紙をそのまま巻いて紙ひもにするより,濡らしてから巻き乾燥させたもののほうが強度が高くなることが分かった。

R04-06 物理 紙の折り目と質量

要約

水に濡れてしわになった本を元に戻したいと思い,紙のしわについて研究を始めた。しわの量を数値化する方法を探っていたが,ほぼ不可能であった。そこで,紙のしわと,紙の折り目は似ているのではないかと考え,量を数値化しやすい折り目に注目して研究を始めた。実験をしていると,紙を折ると質量が減少することに気付き,大変興味を持った。

R04-07 生物 食材が持つ抗カビ効果

要約

近年,多くの食品に防腐剤などが添加されているがそれらは人体に悪影響を及ぼしている。そこで私たちは,この研究で食材から抗カビ物質を取り出すことにより,市販の防腐剤の代わりとして,身近な食材を用いてできる抗カビ方法などのアイデアへとつなげることができると考えた。また,カビが生えやすい環境,生えにくい環境を研究することで,今後のカビの研究やカビの防止などに役立つと期待している。

R04-08 地学 河川の氾濫と角度の関係

要約

近年日本では河川の氾濫による浸水などの被害が増加している。また,その氾濫の多くは,二つの川の合流点で発生している。河川の合流には,川幅の比や流量など様々な条件が存在するが,中でも合流角度によっては川の流速などが変化し,水位の上昇にも違いが生じると考えられる。本研究では,モデル実験を行い,合流角度と水位変化の仕方の関係について調べた。

R04-09 数学 make N ~ 1による分解式の総数 ~

要約

自然数n を構成する式(分解式と定義)の総数を求めることを目的とした。項の値の最大値や項の値の最大値をとる項の数で分類することで総数を求めることが容易になった。分類する際に生じた問題を解決するために,新しい演算を定義し,それについて研究した。

R04-10 生物 ハニーワームのポリエチレン分解と摂食の選択性

要約

現在,プラスチックごみの環境への負荷が世界中で問題になっている。そんな中,プラスチックを分解してその過程でエネルギーを得る昆虫や細菌の研究が注目されている。本研究では,生分解が難しいとされるポリエチレンを消化し,代謝することがわかっているハニーワーム(ハチノスツヅリガの幼虫)に焦点を当て,「蜜蝋とポリエチレン分解細菌」について調べた実験群αと,「ハニーワームの摂食の選択性」について調べた実験群βを行い,ハニーワームのポリエチレン消化と摂食に関する探究を試みた。実験群αでは実験は失敗したが,新たな培地の開発など一定の成果が得られた。実験群βではハニーワームがセルロースを分解できる可能性があることがわかった。

R04-11 生物 耐性を持つ酵母のスクリーニング

要約

空気中の酵母を果物や野菜を用いて集め,増殖時の環境を変化させることで耐塩性や耐酸性を持つ酵母のスクリーニングを試みた。耐塩性酵母については酵母が増殖するときの塩の濃度を調節することでスクリーニングできることがわかった。

R04-12 生物 炭化梅による微生物吸着効果

要約

本研究では,先行研究「梅の種の炭化による有効活用法の検討」を参考に炭化梅を製作し,大腸菌に対する吸着効果の有無について研究することにした。

R04-13 生物 葉焼け現象について ~ カロテノイド量と葉の内部構造から考える ~

要約

葉の内部構造とカロテノイドの量が葉焼けのしやすさに対しどのような関係かあるのか調べるため,5 種類の植物を使い,葉焼けに要する時間の計測,葉に含まれるカロテノイド量の定量,葉の内部構造の観察の3つの実験を行った。その結果,葉に含まれるカロテノイド量が多い植物の方がカロテノイドが少ない植物よりも葉焼けに要する時間が短い傾向が見られた。また,葉の色素層が発達している葉と発達していない(色素層が薄い)葉とでは,発達していない葉の方が葉焼けしやすい傾向が見られた。

» 続きを読む