生徒成果物(研究論文)

特別理科コースの生徒が、学校設定科目「Advanced Science(以下、「AS」)」(2年次2単位、3年次1単位)において専門深化型課題研究に取り組んでいます。ASでは、身近な疑問や興味・関心に応じて生徒自身が研究テーマや実験を設定し、およそ1年半にわたりグループ研究を行っています。このページでは、その取り組みの成果(研究論文)を公開しています。

研究論文

2025年度(令和7年度)

管理番号 分野 研究テーマ
R07-01 物理 災害時に役立つスマホ用リフレクターの研究

要約

災害の多い日本の避難所では,「夜間の照明が明るくて,眠れなかった。」反対に,「照明が暗くて,本を読んだり作業したりすることができなかった。」という意見がある。これは,不慣れな場所での生活に対するストレスに加え,思うように行動できないストレスが重なる,大きな問題である。そこで,私たちは必要なときに,必要な人に,必要な光の明るさを届けることで,避難先での生活のストレスを少しでも軽減したいと考えた。今回は,スマホのライトを光源として本を読むことを想定し,周囲に光が漏れないようにスマートフォン(以後,スマホという)の光を必要な場所に集める方法を模索していく。そのために,身近なスマホに取り付けられる,かつ,手軽な材料で作製,集光できる装置を作製し,この問題の解決に貢献したい。

R07-02 物理 温度勾配を用いた超音波の屈折

要約

物理の授業で,地表付近と上空で気温が異なると,音波が屈折するため,遠くの音が聞こえにくくなったり,聞こえやすくなったりすることを学習した。関連する先行研究では,距離を2㎞とった草地において音波の屈折を測定2)したり,それと同じ気象条件でシミュレーションを行い実測値と比較3)したりしていた。しかし,実験室で温度勾配をつくり,音波を屈折させたという報告はない。そこで,私たちは,「実験室の机上で音波の屈折を観測すること」を目的に実験を行った。実験には,指向性が高いという理由から超音波(40kHz)を使用した。また,シリコンヒーターと送風機を用いて,実験室内に下側が温かく上側が冷たい空気層をつくることに成功した。その空間に,水平方向から上向きに角度をつけて超音波を入射し,受信機を鉛直方向に動かしながら,各地点におけるp-p値(振幅の2倍)を測定した。その結果,音波が理論通り上方に屈折することを確認できた。

R07-03 物理 非電力スピーカーの音が大きくなる原理の追求

要約

現在,様々なスマホを置くだけのスピーカーが販売されていることを知り,どのような原理で音が大きくなっているか解明することを目的として研究を行った。まずMDFと杉を用いて非電力スピーカーを作り,市販スピーカーと比較して有用性を確かめるとともに,材質による音の大きさの違いを探った。実験から,強制振動が影響しているのではないかという仮説を立て,さらに実験を行った。音叉を用いた実験では,2枚の板の間隔が作る空間によって共鳴で音が大きくなることが分かった。またスピーカーユニットを用いた実験では,特定の周波数でのみ板が共振し音が大きくなることが分かった。
実験を通して共鳴や共振では特定の周波数でのみ音が大きくなることが分かり,すべての音域で音が大きくなる要因は強制振動なのではないかという1つの結論を導き出した。

R07-04 地学 続成作用をモデルとした硬化体の作製

要約

現在使用されているコンクリートは,セメントと砂・石から作製されている。しかし,コンクリート作製に用いる川砂の不足や,セメントの作製過程での多量の二酸化炭素の排出など,様々な環境問題を抱えている。そこで私たちは,身近な素材を利用しつつ,より環境負荷を抑えられるコンクリート様物体(以下,硬化体と呼ぶ)を作製したいと考えた。本研究では,堆積岩の形成メカニズムである“続成作用(圧密作用と膠結作用)”に注目し,曲げ強度がより高い硬化体の作製を目標にして実験を行った。

R07-05 地学 打ち水で涼しくするには

要約

近年のヒートアイランド現象により体感温度が上昇し日常生活が不快に感じる。そのために打ち水をすることによって体感温度を下げ生活を快適にしたいと思った。だが,打ち水によって湿度が大きく上昇してしまうと,逆に体感温度が上昇してしまうことが分かった。そのため打ち水をするのに適した環境条件を明らかにしたいと思った。

R07-06 化学 サリチル酸の併用による活性炭触媒の表面アルカリ処理の代替検証

要約

本研究では,酸によってセルロースを加水分解するにあたり,活性炭触媒を用いた分解の促進,及び手法の簡易化について検討を行った。先行研究より,表面にアルカリ処理を施した活性炭触媒,活性炭K26を用いて加水分解を行ったところ,活性炭表面のカルボキシ基とフェノール基のはたらきにより大幅な分解促進効果がみられている。これと同様の官能基配置を持つサリチル酸を活性炭と併用することで,アルカリ処理を行わずとも同程度の触媒効果が得られるかを検証した。仮説として,溶液中で活性炭が細孔にサリチル酸を吸着することで疑似的な担持が起こり,活性炭とサリチル酸をそれぞれ単体で使用した場合に比べて高い触媒効果を得ることができるのではないかと予測を立て実験を行った。

R07-07 数学 物体投射の最適な条件の研究

要約

私たちはごみをごみ箱に捨てる際,少し離れた所から投げ入れて失敗することに悩まされていた。そのため,離れた所からごみを狙った位置に投げ入れることができる条件を探すことを目的とした。ごみ投げをする際の,投げ始めの手の位置,投げた角度,初速に注目してデータを取った。重回帰分析を行ったところ,投げ方には個人差があること,投げ始めの位置は,入ったかどうかの結果に影響しにくいことが分かった。また,入らない要因には距離方向のずれ,横ずれが関係していることが分かった。距離を固定して,角度を目的変数とした重回帰分析の式を作成した。初速の平均を代入すると,その距離で入る角度を示せるようになった。以上より,ごみの投射に関する分析方法の1つを確立できたと言える。

R07-08 生物 色・模様が昆虫に与える影響について

要約

本研究では,色及び模様を害虫の防除や益虫の誘引に役立てることを目的とする。
実験は検証実験,実験1~6を実施した。これらの結果から,縞模様の色や間隔が昆虫の誘引に大きな影響を与えることが確認された。特に赤黒,赤緑において昆虫の誘引を抑制することが考えられる。また,縞模様の間隔が小さいほど昆虫の誘引を抑制する可能性が示唆された。特にアザミウマとよばれる花や新芽を加害する昆虫(害虫)において,赤黒,赤緑は他の色の組み合わせ(赤青,赤白,赤黄)と比べて,誘引を顕著に抑制することが確認された。

R07-09 物理 毎日の食卓を便利に!シンプルなふりかけ容器の考察

要約

本研究では,市販品の検証から自分たちで作成した開口部を用いて実験と考察を行い,のりたまを最後まで楽しめる容器を提案する。のりたまは,海苔やたまご,抹茶塩などの五種類で構成されている。私たちはのりたまに含まれる海苔以外の内容物を「たま」とし,たまを合わせた質量を「総質量」と定義し,たまと海苔の質量と割合をグラフ化した。作成したグラフから,たまと海苔には負の相関関係があると分かった。また,質量と割合それぞれについて標準偏差を求めた。ある値までは開口部を大きくすると標準偏差が小さくなるが,超えると標準偏差が大きくなることが分かった。

R07-10 化学 植物によるトゥシューズの消臭 ~ローズマリー、オリーブを用いて~

要約

私たちはクラシックバレエを習っている。クラシックバレエで使用するトゥシューズは,湿気を吸うとつま先部分が柔らかくなってしまうため,洗うことが出来ず,不快な臭いがするようになる。一般的にトゥシューズは,2週間から1か月程度で買い替えるが,交換までの間不快な臭いが続いて非常に困る。そこで私たちは,洗う以外の方法でトゥシューズの消臭をしようと考えた。汗の臭いの主な原因はイソ吉草酸である。分子式は(CH3)2CHCH2COOH,分子量は102.13である。液性は酸性で,揮発性があり,非水溶性である。本研究では,イソ吉草酸が酸性であることに注目し,私たちにとって身近な植物を用いた中和反応でトゥシューズの消臭を行うことを目的とした。

2025年03月26日

2024年度(令和6年度)

管理番号 分野 研究テーマ
R06-01 地学 星と気象の関係

要約

夜空を見上げ,星を見ると,日々星の明るさが変わっているように感じる。その理由として,その時の気象が大きく関係しているのではないかと考えた。本研究では気象を気温,水蒸気量,風速の三つに絞り,それらの気象と星の明るさがどのように関係しているのかを調べることにした。また,それぞれの気象の影響力の大きさについても調べる。

R06-02 物理 吹き矢の精度に関する研究

要約

吹き矢は古来から世界各地で狩猟具として利用され,今日ではスポーツとして幅広い年代に愛されている。私たちはそんな吹き矢に興味を持った。しかし吹き矢に関する文献は少なく,公式大会で使われている吹き矢にはまだ改善の余地が残されていると考えた。そこで吹き矢の重心や吹き矢後端部のスポンジの有無,矢を射出する際の吹き矢の向きを変化させ実験を行った。結果は重心率0.40程度での精度が最も高く,スポンジがあることで精度が向上し,矢詰まりが解消されることが分かった。また矢を射出する際の向きを統一することでも精度を向上できることが分かった。

R06-03 物理 体育館の床の滑りに関する研究

要約

体育館での運動時,雨の日など湿度の高い日は滑りにくいと感じた。一般的な経験則として湿度が高いと靴が滑りにくくなり,パフォーマンスが向上するといわれている。この原因として,湿度が高い日は空気中の水分量が普段より多いことが影響しているのではないかと考えられている。空気中の水蒸気は表面張力によって凝着力,つまり物体をくっつける力を持っている。湿度が高い日は靴と床の凝着力が大きくなり摩擦力が大きくなっていると考えられている。そこで私たちは,体育館において最も滑りにくくなる空気中の水分量を調べることにした。本研究では,体育館で運動する際によく使用される体育館シューズと,本校旧体育館解体時にいただいた体育館の床を使用して実験を行い,二物体間の静止摩擦力の大きさが空気中の水分量によってどのように変化していくのかを調査していく。

R06-04 生物 獣毛の構造と手触りの関係についての研究

要約

私たちは,動物の毛の手触りの違いやその違いを決定づける要因について興味を持ち,研究を行いたいと考えた。先行研究を調べると,手触りの差を生む要因は,主に毛髪1本の物理的特性によるものであり,力学的な解析により手触りを評価することができると分かった。そこで,私たちは手触りの中でもコシ感に着目し,コシ感を生みだす物理的特性と獣毛の縦断面構造の関係について研究を行った。この研究により,最終的には本物の獣毛に似た手触りの合成繊維の開発などにつながるようなデータを得ることを目標に,研究を進めた。

R06-05 物理 パーフェクトジェンガを達成させるための方法

要約

私たちは,友達と「ジェンガ」という木製のブロックのタワーからブロックを一つ抜いて,最上段に積み上げていくテーブルゲームをしている中で,絶対に負けたくないと思い,ジェンガについての研究を進めようと思った。その中で「パーフェクトジェンガ」(以下「PJ」とする)という各段のブロックを必ず1個以上抜いた状態があることを知った。各段から必ず2個のブロックを抜いた状態を「真のPJ」と定義し,(真のPJを達成した状態)=(最大数のブロックを抜いた状態),つまり,絶対に負けないことになると考え,その状態を目指すことにした。そこで,私たちは,真のPJを達成するためにジェンガを配置,抜く順番,抜き方,置き方という4つの要素に分け,それぞれの要素ごとに最善の方法を考えることとした。

R06-06 化学 植物の持つ洗浄効果 ~髪の毛の清潔さを保つためには~

要約

私たちは髪の毛について興味があることに加え,現在の日本では様々な災害が起こっていることから,シャンプーが手に入らない時であっても髪の毛の清潔さを保てるようにしたいと考えた。江戸時代ごろの日本では,髪の毛を洗うものとして米のとぎ汁が利用されていた。またジャガイモやツバキ,オリーブなどの植物はサポニンという水に溶かし混ぜると石けんのような泡を作り,一定の洗浄効果があるとされている天然の界面活性剤を持っていることが先行研究から分かっている。そこで,これらのうちどの植物にどれくらいサポニンが含まれていて,髪の毛を洗うことに最も適しているのか調べることを目的として研究を行った。実験を行うにあたって,私たちは汚れを髪に付着したものと頭皮に付着したものと定義した。

R06-07 数学 一筆書きできる図形の考察

要約

一筆書きできる図形は,スマホのロック画面のパターン解除や除雪車のルートの作成など日常生活でも幅広く活用されている。特に私たちにとって身近である,スマホのパターン解除では点の個数が3×3の正方形の配置をしたものが主流となっているが,どのようなパターンを設定すればより,解除されにくいのか疑問に感じた。そこで本研究では点の個数や辺の本数を任意の値としたときに,一筆書きできる図形が何種類作図できるのかを考察することを目的としている。そのために一筆書きできる図形がもつ性質についての考察を行った。

R06-08 化学 うどんのゆで汁のろ過 ~食品廃棄物から作った炭を用いて~

要約

うどんのゆで汁は多くのデンプンを含んでおり、排水される際に様々な環境問題を引き起こしている。そこで、本研究では、うどんのゆで汁の浄化を目的とし、炭によるデンプンのろ過を行った。また、炭を食品廃棄物から自作することで廃棄物の有効活用も目指した。本実験では、うどんのゆで汁は中力粉水溶液で代替した。また、どれだけろ過できたかを示す指標をろ過率と定義してCOD測定によって求めた。その結果、糊化していないデンプンは炭で吸着することができたが、糊化デンプン(ゆで汁中と同じ状態)はろ過率が数%程度と低く、炭で吸着することは不可能であることが分かった。また、糊化していないデンプンの吸着においては、炭の材料別にろ過率に差が見られた。炭やデンプンの状態などの違いを考慮すると、炭によるデンプンの吸着においては表面の化学的な極性と炭の比表面積の大きさが関係していると考えられる。現段階では、目的であるうどんのゆで汁の浄化を炭でのろ過で行うことは難しいと言える。今後、炭と水溶液の相対的な量やデンプンの老化現象などに着目して更なる実験を重ねることで可能性を見出したい。

R06-09 生物 納豆菌がオリーブに与える影響

要約

野菜や果樹などの植物栽培において農薬が使用される場合があるが,その使用量が多くなるほど,環境汚染や生態系の崩壊に繋がる危険性も高まる。しかし,人口が増加し続ける現代社会において食糧問題の解決のためにも,効率よく多くの野菜や果樹を栽培できることは人類にとって最重要課題とも言えるのではないだろうか。さらにその方法が人体や自然環境に対する影響が少ないものならばなお良いのではと考えた。そこで,農薬を使用せずに植物を栽培する方法を模索し,上記のような問題の解決の一助となればと考えて,本研究を行った。

R06-10 物理 捕球率を表す式の作成 ~その球捕るか避けるか,ドッジなんだい~

要約

ドッジボールにおいて,球を捕るべきか避けるべきかの判断材料となる式を作ることを目的とした。球技における実験の変数の中で,球の位置,球速に着目し,捕球との関係を調べるために投球実験を行った。結果分析により球の位置,球速は捕球に影響することが分かったため,それらを説明変数として,ロジスティック回帰分析を行い,捕球できる確率を求める式を作成した。作成した式が何を意味するのかを調べ,考察するためにヒートマップで式を可視化した。ヒートマップから,球速が大きくなると捕球できる範囲が狭くなっていることが確認できた。

R06-11 数学 仮想地形のプローシャル生成

要約

架空の地形はゲームや都市計画など様々な分野において利用されている。加えて,近年の仮想現実(Virtual Reality)への注目から今後もその需要は高まっていくと予想される。しかし,デザイナーが一から地形を作るには多大な時間と労力を要する。そこで現在は,コンピュータによる自動生成を用いて地形生成の負担を軽減している。ゲームでは現実ではありえないような形状の地形が生成されていることがある。我々はこのような問題を解消したいと考えた。本研究では,既存のアルゴリズムを用いて生成した地形の自然らしさ(リアリティー)の評価方法を考えることにより,自然な地形の自動生成の実現を目指す。

R06-12 物理 船を最速にするための条件

要約

実際にヨットに乗った時に防水スプレーを船底に塗布することで速度が変わったと感じたことから着想を得て,船の速度に影響を及ぼす形状や船底状態などの様々な条件を見つけることを目的とする。また,新潟県立長岡高校の先行研究「表面状態による摩擦抵抗の変化」から親水性の塗料は摩擦を抑制すること,塗料を注意深く塗装することで表面の粗度は改善されることが分かっている。なお,船と流水の摩擦が大きいほど船の速度は低下することも分かっている。千田哲也の先行研究「船底塗料と摩擦抵抗」から船の抵抗の四大成分は形状に起因する“形状抵抗”,波を生成することで発生する“造波抵抗“,流水との摩擦による“摩擦抵抗”,“空気抵抗”でありそのうち摩擦抵抗が全体の五割を占めることが分かっている。本研究では空気抵抗を除く三つの抵抗について考える。

R06-13 生物 校庭ワカメはバイオミネラリゼーションを行っているのか

要約

駐車場や公園・校庭などに生息し,群体の見た目から校庭ワカメと呼ばれているイシクラゲ(Nostoc commune)はシアノバクテリアの一種であり,乾燥に強く窒素固定を行うことができる原核生物である。先行研究1より,Wil V. Srubar Ⅲらがシアノバクテリアの一種で海洋に生息しているSynechococcus属を用いて生きたコンクリートを作製したことを知った。砂とゼラチンを主体とする混合物の中で増殖したSynechococcus属はバイオミネラリゼーションという生物が鉱物を作り出す働きによってCaCO3を生成し,砂粒子同士をつなげるゼラチンの架橋結合の強度を高めている。私たちは身近にあるイシクラゲを用いてコンクリートを作り,そのコンクリート内でイシクラゲがバイオミネラリゼーションを行っているのかの検証を行った。

2025年03月26日
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