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落ち葉始末記

          高松第一高等学校  黒川康嘉
1 はじめに
今、子どもたちに求められることの一つは、地球的視野を養い、自ら学び、自ら考え、課題の解決に向かって主体的に行動する力を育成することである。しかし、これは子どもたちに求められるだけのものではない。むしろ子どもたちに日々接して、各教科や人権、平和、環境などを教える私ども教員にこそ強く求められるものだと、私は思っている。
平成12年4月、校長着任後から「あれもしなければ」、「これも片づけなければ」と、多くの問題点を自らの課題として設定してきた。スクールバスの更新や温室の整備などいくつか解決を見たものもある。中には永久課題のようなものもある。そんな問題はそう簡単にはいくまい、じっくり行こうと腰を落ち着けて取り組んでいるものもある。
一方、これはこうすればもしかすると解決できるかもしれない、そんなアイデアは夜中寝床の中で浮かんでくるものが多いけれど、朝起きてもう一度思い返して実行できそうだと判断すれば、出勤して教頭先生や事務長さん、担当の先生にこれやりましょうと相談する。
いろいろ先生方の抵抗もあるが、時に強引に、時に係の先生に矢面に立っていただいて実施をしているものもある。しかしながら協力を得るのが困難なときは、自分で汗を流してできるところからしていくことにしている。校内外で事件や問題が発生しなければ、学校で最も閑で自由な時間を持っているのは校長である。
さて、そうした中で1年半前から取り組んでいるのが落ち葉の腐葉土化である。落ち葉は資源であるという認識と物質は循環するという生物学の基本原理、さらにはゴミ減量化を図ろうという社会的要請の下、実験的に実施したので、その結果などについて報告する。
2 材料と方法
 材料は校内に植栽されているクスノキ、ヒイラギモクセイ、ケヤキなどの樹木の落ち葉と清掃中に抜かれた雑草類である。こうした材料を腐葉土化するために、できる限り手間のかからない以下の方法を採用した。
@ 市販のコンポストに落ち葉を入れる。
A 木枠を作り落ち葉を入れる
B 地面に穴を掘り落ち葉を入れる。
 コンポストは教頭先生から中古品を2個譲り受け、木枠は文化祭の展示に用いるベニヤのパネルを用いて、90cm×90cm×180cmのものを作成した。コンポスト、及び木枠の中に落ち葉を入れ、その上に軽く土を載せる。数日するとかなり量が減るので、再度落ち葉を入れ、その上に土を載せる。この処理を4,5回繰り返した。また、地面の穴掘りは、木陰の目立たないところに適当な面積で深さ30cm程の穴を掘った。そこに盛り上がる程度の落ち葉を入れ、その上から掘った土を載せる。いずれの処理法も平成13年5月から平成14年6月の期間そのままに放置した。なお木枠の落ち葉にはビニールシートを被せていたが、風で飛ぶなどして、必ずしも覆いの役割を果たしてはいなかった。
3 結果と考察
 処理する前の落ち葉の状態を(図―1)に示す。コンポスト及び木枠の中に1年間放置した落ち葉の状態を(図―2)に示す。最終的にそれぞれの容器に一杯になる状態にして放置したが、1年後には高さにして約2分の1に減少していた。ほぼ完全に腐葉土化した部分もあれば、不完全な部分もある。放置するだけでなく、途中で天地返しをするなり、切り戻しの作業を入れるとさらに腐葉土化が完全になるだろう。しかし現段階でも概ね腐葉土として利用できる状態になっているものと判断できる。

(図-1)集積された
処理前の落ち葉

(図-2)腐葉土化した
落ち葉
また、木枠に用いたベニヤ板は、当初の予想では1年半後にはぼろぼろになると思われたが、(図―3)に示すように、一部で腐食が見られる程度で、上下反対にして再利用すれば、さらに1年以上使用が可能な状態であった。
一方、地面に穴を掘って埋めた落ち葉は、かなり原型をとどめており、腐葉土化が不十分であった。空気が遮断されて分解が抑制されたものと思われる。加えて、穴を掘る作業はかなりの労力を必要とするので、「年寄り」には必ずしも適当な落ち葉処理法ではない。
今回処理した落ち葉の量は、2個のコンポストで約1立方メートル、2個の木枠で約5立方メートル、穴掘りで約1立方メートル、計7立方メートル程度である。

(図-3)1年半使用された
ベニヤの木枠
以上の結果から、木枠を使用する方法が、費用、処理量、労力などを考えれば、最も適当な方法である。毎年校内で発生する落ち葉や雑草の総量は、詳細に計算したわけではないが、30立方メートルと見積もって大きな誤差は無いものと思う。30立方メートルの落ち葉を処理するためには、今回作成した木枠であれば、30/2.5=12個必要ということになる。2年間放置するということであれば、24個設置すればよいと考えられる。学校内の目立たない箇所で、この程度の設備を設置する場所を見つけるのは困難なことではない。木枠でなくてコンクリートブロックで枠を作れば永久的に使用できるだろう。
落ち葉をゴミ袋に詰めて校外に搬出するとすれば、どれだけのゴミ袋が使用されるか計算してみた。通常使われる50cm×70cmの大きさのゴミ袋は、およそ25リットルの落ち葉を入れることができる。それ故、30立方メートルの落ち葉を処理するためには、1200枚のゴミ袋が使用されることになる。実際は、植木業者に剪定を依頼して生じた枝や葉は直接トラックで運び出してもらうので、ゴミ袋の使用量はもっと少なくて済むものと考えられる。しかしながら、かなりのゴミ袋が落ち葉処理のために消費されることは否定できない。そういった観点からも、できうるかぎり落ち葉の校内処理は積極的に推進したいことである。
4 腐葉土の処理
 以上のような方法で校内の落ち葉を腐葉土にすれば、校庭や花壇に鋤き込んでいくことで速やかに消費することができる。そのためには、腐葉土の運搬や花壇の耕作などいささか労力を必要とするところである。植物栽培や園芸に関心がある生徒が集まって園芸部などを作ってくれたらと願うところであるが、残念ながらその兆しはまだない。
今回作られた腐葉土の一部は早速花壇の中に鋤き込んで土壌改良材及び肥料として用いた(図―4)。この花壇には最近注目されているケナフを植えようと思っている。秋には刈り取って、中部養護学校へ持参したい。量は少ないけれど、中部養護学校の生徒たちが作業学習で作るケナフ紙の材料の一部になるだろうと期待している。
5 参考文献
 特に無し

(図-4)腐葉土を鋤き込んで作った花壇