どんよりとした、空の風景  (作者:辻山 希美代)


空はいたってどんよりとしていた。
いいかげん、毎日こんな天気だと
普段は何とも思わない青空を、少しばかり懐かしく思ってしまう。

のっぺりとし、又、ペンキをぶちまけたかのように濃淡がなく、
              何処か無機的な処さえ感じさせる、白。

所々、黒い影があって、
 かろうじてそこが平面ではないことを示している、そんな感じ。
・・・たいくつな、社会の時間。
       空までも退屈なんじゃ、見てる意味、ないじゃない。

絵筆を置いて、そっと机に腕を立て、ほおづえ。
上目づかいに見つめる−−−じっと。
まぁでも、そう。
こんな−−−どんよりとしたいかにも暗い、
         曇り空があるからこそ、青空は美しいのかもね。
空の青さは一段と、目にしみるのかも。

微笑んだ。
     −−−−−ざざざ・・ぁぁ・・・ん。
           海鳴りが聞こえる。

目を閉じると青。海の碧と空の蒼。
去年の浜辺の風景。
まぶたの裏にしっかりと、そしてありあり残っている、そのの色彩。

                  きっと、夏はもうすぐ・・・

                         《FIN》
               written in 1995